1000年の歴史を紡ぐ「和泉蜻蛉玉®」— 山月工房が守る“ガラスの中の宇宙”

地元のええもん

大阪・泉州地域(旧和泉国)で、1000年以上にわたり密かに受け継がれてきた幻のガラス玉、「和泉蜻蛉玉(いずみとんぼだま)」。手のひらに乗るほどの小さなガラス玉の中に、吸い込まれそうなほどの深い色彩と複雑な文様が広がるその様は、まさに“ガラスの中の宇宙”です。
現在、この伝統技法を守り、現在も製作を続けているのが和泉市にある「山月工房」です。今回は、大阪府伝統工芸士・松田有利子さんが次世代へ繋ぐ、奇跡の輝きと山月工房の物語をご紹介します。

普通の「とんぼ玉」とは何が違う?山月工房だけの特別な技法と素材

和泉蜻蛉玉は、一般的な「とんぼ玉」とは明確に区別される、山月工房独自の製法を持っています。
通常のとんぼ玉が「1本のガラス棒」をガスバーナーで溶かして作るのに対し、和泉蜻蛉玉は「数本〜十数本の色付きガラス棒を束ねて」作られます。
離型剤を塗った芯棒にガラスを巻きつけて形を整えた後、小さなカラーガラスで「スジ」や「トンボ」「粉かけ」「銀彩」といった緻密な文様を描き出します。

さらに山月工房の大きな特徴が、その「ガラス素材」です。2010年、京都・平等院鳳凰堂の国宝「阿弥陀如来坐像」を装飾する「瓔珞(ようらく)」のガラス玉復元を手掛けた山月工房。その国宝復元材料をベースにした独自の貴重なガラス「千の時」を使用し、1000年前から続く人々の想いを現代の作品に宿しています。

途絶えかけた歴史。父と娘が繋いだ「山月工房」の軌跡

江戸時代には「さかとんぼ」と呼ばれて全国的に名を馳せた泉州のガラス玉ですが、昭和以降、安価な海外製品に押され職人が激減してしまいます。
そんな中、泉州の硝子玉全般を熟知する「最後の専業職人」となったのが、山月工房の創業者である先代・小溝時春さん(大阪府伝統工芸士第78号)でした。彼は歴史保存活動のため、この地のガラス玉を「和泉蜻蛉玉」と名付け、技術の継承に奔走しました。

亡き父の「この蜻蛉玉を残してほしい」という遺志を継いだのが、二代目代表であり娘の松田有利子さん(大阪府伝統工芸士第85号)です。長年にわたる歴史や技法の調査が実を結び、2002年に「大阪府知事指定伝統工芸品」として正式に認定されました。2004年に先代が逝去した後も、「1000年の輝きを次の1000年へ」というスローガンのもと、現在は唯一の継承者としてその技を守り続けています。

世界に一つだけの逸品を、日常の装いに

職人の手で一つひとつ生み出される和泉蜻蛉玉は、色も文様もすべてが異なる「世界に一つだけ」の芸術品。
山月工房では、ネックレスやピアス、ブレスレット、根付(ストラップ)など、現代のライフスタイルにもすっと馴染む美しいアイテムとして展開されています。また、江戸時代の技法を用いたお香立て「古墳玉」なども人気を集めています。歴史の重みを感じさせながらも、どこかモダンで洗練されたデザインは世代を問わず愛されています。

どこで買える?見学・店舗情報のご案内

「和泉蜻蛉玉®」は山月工房の登録商標であり、ここでしか生み出せない希少な逸品です。近年は類似品や画像を流用した詐欺サイトも確認されているため、必ず公式の店舗やサイトでお求めください。

現在、実際に作品を見て購入できるのは堺市にある常設店です。

和泉蜻蛉玉資料館 山月工房堺東店

資料館も兼ねており、歴史と美しさを同時に体感できます。

住所
大阪府堺市堺区中瓦町1-4-25「文具のキシダ」2階
営業時間
10:00〜18:00(土曜は17:00まで)
定休日
日曜・祝日
TEL
072-224-2670

山月工房(和泉市)

住所
大阪府和泉市観音寺町862-5
備考
※工房での販売は行っていません。見学等をご希望の場合は公式サイトの「お問い合わせ」より事前のご連絡が必要です。
公式HP
山月工房 公式サイト
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ライター

地域の魅力を掘り起こすローカルメディア運営者。街の人・店・風景を訪ね歩き、日々の暮らしを豊かにする“ちいさな発見”を発信しています。泉州をはじめ関西の現場から、温度のあるリアルな情報をお届けします。

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